介護に疲れた時、心が軽くなるヒント ■ Q&A「認知症の妻を怒鳴り続ける日々。助けを求められず苦しいです」

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介護に疲れた時、心が軽くなるヒント

■ Q&A「認知症の妻を怒鳴り続ける日々。助けを求められず苦しいです」 ■

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介護者メンタルケア協会
橋中です。

「橋中さんがおばあさまの死を
短時間で乗り越えられたことに驚いています。
私は3年前に亡くなった父のことを
思い出すたびに泣いています。」

というメッセージをいただきました。

納骨で起きたトラブルについてだけ書いたので、
吹っ切れているように感じられたのかもしれませんね。

どんな状態になれば乗り越えているのか?
と定義するのは難しいですが、
今でも、グズグス泣くときもあれば、
「あの時、こうしていればよかったのに」といった
後悔で苦しい気持ちになる時もあります。

逆に、楽しく祖母の思い出話ができる時もあります。

わたしが心がけていることは、
楽しいことも、突然泣けてきて涙が止まらなくなる時も、
否定せずにあるがまま感じ、受け止めることです。

グリーフケアで最もやってはいけないことは、
悲しむことへのダメ出しです。

「もう何年も経ったのに!」「まだ落ち込んでいるなんて!」って
自分へダメ出しすることは、心の回復に悪影響があるんですよね。

家族を失ったり、弱っていく姿を目の当たりにする悲しみは
癌のように、「何年再発しなければ寛解」といった定義がありません。

昨年から、グリーフケアに関する講座を開催しています。
もっとたくさんの人に届く機会を作りたいと強く感じました。

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前回に引き続いて
お寄せいただいたご相談にお答えする回です。

介護疲れについて、

・頭ではわかっているけど頼れない
・誰かに相談したけれど、わかってもらえなかった
・協力してもらえなかった
・もう少し頑張れば何とかなる
・どうしたらいいかわからなくなっている

と感じている人にぜひ読んでいただきたいです。

最後に、
「介護疲れの悩みを整理する5のステップ」
を用意しました。

「まだ相談するほどでもない」と感じている人でも
状況の整理をすることで、
介護に対する意識が変わるかもしれません。

是非、やってみてくださいね。

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■ ご相談(Dさん・60代男性)

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5年前に60代の妻が物忘れをするようになり、
若年性認知症と診断されました。
私は、2年前に介護のために早期退職しました。
現在、妻は要介護2です。

最近、トイレの失敗が増えるようになり、
その度、妻を強く怒鳴ってしまいます。
怒鳴りだすと自分では止められません。
自分でも疲れていることはわかっています。

橋中さんの本を読んで、助けを求めればいいんだと
頭では理解しているつもりです。
ケアマネからもショートステイを利用するように
勧められていますが、抵抗があり利用していません。

怒鳴っている時は、この声を聞いて
近所の人が止めてくれないだろうかと思うこともあります。
どうしたらいいでしょうか?

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■ 橋中からの回答

奥様のために早期退職をされ、これまで頑張ってこられたのですね。
文面からは、奥様のために頑張りたい、でも限界を感じている、という
葛藤のお声が伝わってきました。

まずDさんにお聞きしたいことがあります。

・起こされずに眠れる日は、月に何回ありますか?
・7時間以上眠れる日は、月に何回ありますか?
・一人でホッとできる時間を2時間取れることは、月に何回ありますか?
・家事や介護をしない日は、年に何回ありますか?
・趣味や友人との食事等、介護以外の時間を過ごしたのは、いつが最後ですか?

私たちが心身の健康を保つのに必要なものは以下です。

・一人で過ごす時間→1日2時間
・睡眠→1日最低7時間
・20分ほどの軽い運動→週3回
・映画や美術館、本屋に行くなど文化的な活動→週1回

Dさんはおそらく、この全てを削って
介護されているのではないかと推測します。

特に睡眠は重要です。
たった1日睡眠不足になるだけでも、感情が不安定になったり、
人への思いやり(共感力)や前向きな気持ちが低下するだけでなく、
問題解決能力も著しく低下します。

介護者の多くは、慢性的な寝不足が続き、
心身の回復が十分にできないまま介護しているのです。

誰だって介護疲れをします。
愛情や思いやり、責任感や気力だけでは乗り切れないのです。

Dさん自身も「このままの状況が続くと、大変なことになる」と
危機を感じて、ご相談を寄せてくださったのだと思います。

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「誰かに止めてほしいと思いながら怒鳴ってしまう」
との言葉に、胸が痛くなりました。
私にも、同じ経験があるからです。

けれども、あえて厳しい言葉を届けさせてください。

Dさん自身が「この状況を変えるんだ」と決めない限り、
今の状況は変わりません。
Dさんが「助けてほしい!」と面と向かって伝えない限り、
あるいは事件が起きるまで、誰も止めてはくれないでしょう。

では、具体的に何をすればいいか。

私に送ってくださったメールを、そのままケアマネに見せることです。
そして、一人で休み、眠れる時間を一刻も早く取ってください。

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災害派遣などの厳しい状況下で、
自衛官が活動できるのはなぜだと思いますか?

ローテーションを組んでいて、
一定の期限がきたら部隊ごと入れ替わるシステムだからです。
普段から厳しいトレーニングを積んでいる自衛官でさえ、
期限がない状態で任務をこなし続けることはできないのです。

でも、介護には期限がありません。
休息すら得られない状況で、介護疲れするのは当たり前のことです。

Dさんが今の状況にあるのは、Dさんのせいではありません。
自分でも制御できないほど怒鳴ってしまう時は、
心身の限界にきていること知らせるサインです。

奥様を守りたい、自分でなんとかしたい、
誰かに迷惑をかけたくないとの気持ちまで捨てることはありません。
けれども、このままの状況が続くとどんなことが起きるのか、
目を背けずに直視する勇気を持ってください。

いくら「俺が介護する!」との気持ちがあったとしても、
怒鳴り続けている現状では「妻を守る」という目的を果たせていません。

Dさん自身を、そして奥様を守るためにも
「助けて!」を伝える勇気を持ってください。

それが今あなたが果たすべき「責任」です。
大切な人を守るために、どうか勇気を持って、
ケアマネジャーに相談してください。

もしケアマネに相談できないのであれば、
なぜ相談したくないのかを書き出してみましょう。

その理由が、あなたと奥様の命以上に重要なことなのかどうか
考えてみてください。

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私が、要介護5の寝たきりの母の介護をしていた時のことです。
祖母の認知症の症状も進行し、平均睡眠時間は3時間程度でした。
起こされずに眠ることなど2時間あればいい方で
4時間も眠れば「今日はよく眠れた!」といった状況でした。

この頃を振り返ると、毎日のように祖母に怒鳴り
寝たきりの母にさえ怒鳴っていました。
訪問ヘルパーさんがいる時に怒鳴ることもありました。

誰かがいると、ある程度自分を制御できるので、
ある意味「安心して」怒鳴っていたのだと思います。

ショートステイを利用し、眠れる日が増え、自分に余裕ができた時
わざわざ人に聞こえるように怒鳴っていたのは
自分のつらさ、大変さを誰かにわかってもらいたかったからだったと、
初めて気がつくことができました。

今はまず、「もう限界! もうできない!」を受け入れる勇気を持ち
Dさんご自身の負担を軽減する行動をとりましょう。

その前に、一人でもできる以下の5ステップを行って
自分の悩みを整理してみてください。

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【介護で疲れている人のための、悩みを整理する5ステップ】

A4サイズの紙を5枚用意します。
携帯電話やスマートフォンが慣れている人はメモ帳機能を使いましょう。

そして、以下の3つの質問について、
それぞれ別々の紙に、思いついたことを書き出します。
回答でなくても、文章になっていなくても、単語だけでも構いません。

1)ここまで大変な状況でも、なぜ介護を続けたいのでしょうか?
2)サービス(ショートステイなど)を利用したくない理由は何でしょうか?
3)このままの状況が続くと、どんなことが起こると思いますか?

続いて、書き出した3枚の紙を並べます。

1−3を見なおして、さらに気づいたことを4枚目の紙に書き出します

5)1−4で書き出したことを5枚目の紙に清書します。

このステップを踏む目的は、
・何に困っているか
・何を避けたいのか?
・本当はどうしたいのか?
・どんな助けを求めているのか?
を明確にすることです。

これは、苦しんでいる最中であればあるほど、言語化しにくいのです。

そして、書き出したものを周りの人に見せることで
困っている現状が伝わり、助けを得られやすくなります。

最初は書こうとしてもすぐに答えが出ないかもしれませんが、
少しずつ取り組むことで言葉が出てきやすくなります。
焦らず取り組んでみてください。

Dさんのように、自分はもう限界にきているとわかっているのに
助けを求めることができない人や
誰かに相談したけれど、わかってもらえなかった、
協力してもらえなかったと感じている人は、是非やってみてください。

橋中今日子

ご質問、ご感想などお気軽にお寄せください。
https://1lejend.com/stepmail/kd.php?no=355424

http://kyonchankaigo.com/profile/

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