重要なお知らせ

弊協会では、ヤングケアラー問題に取り組みます

「家族の問題は家族で解決」という思い込みがヤングケアラーを生む

国は、家族の看護や介護や世話を担う18歳以下の子どもたち「ヤングケアラー」の対策に乗り出しました。2021年3月に初めての全国調査が行われ、4月12日に調査結果が発表、5月に具体的な支援策策定が予定されています。

ヤングケアラーの一番の問題は、子どもたちに過剰な負担がかかっているという自覚が、子ども本人にも家族にもないことです。「家族の問題は家族で解決すべき」という無意識に刷り込まれた認知(考え方)によって、問題を問題だと認識できず、周囲にも気づかれることはありません。今回、国が検討している対策は、学校を中心とする支援体制の強化です。しかし、閉ざされた家庭内の問題に対応するにはまず、社会全体が正しい知識を持つことが必要です。

4歳から、心を病んだ母に寄り添う

私自身、物心をついた頃から、うつ病だった母のケア、知的障害の弟の世話を担ってきました。私の最も古い記憶は、昼間なのにカーテンが締め切られた暗い部屋で、母が背を向けて眠っている様子です。親戚から「障害児が生まれたのはあんたの血のせいや」と心ない言葉を投げかけられた母は心を病み、次第にアルコールに溺れるようになりました。

さらに、中学3年生の時、父がスキルス性胃がんを発症し、経済的な問題も起きました。この時は、担任教師に「父が癌になった」と話せたことで、無利子の奨学金を申し込むことができ、大学への進学も叶いました。しかし、母のうつ病やアルコール依存症によって、私も家族も大きな問題を抱えていたことは誰にも話せませんでした。

大学には通えるようになったものの、引き続き家族のケアは続きます。次第に無気力になり、学業に打ち込めない状態に陥りました。「自分は怠け癖のある人間だ」と自分を責めていましたが、今振り返ると、家族の問題に対応することで燃え尽きてしまっていたのでしょう。この「燃え尽き」は、ケアの真っ最中だけではなく、問題が解決してから発生することもあります。気力が回復するのに年単位かかることもあるのです。

外からは見えない問題に苦しむヤングケアラー

私のようなヤングケアラーは以前から存在していました。しかし、現代は超高齢化社会です。働く両親に代わって認知症の祖父母を介護する子どもや、うつや統合失調症など精神疾患を抱えた両親をケアしている子どもが急激に増えているとの調査結果が出ています。

ガンなど「分かりやすい病気」であれば、比較的周りの人に相談しやすいです。実際、私も父のガンのときは教師に相談できました。しかし、うつ病や統合失調症、アルコール依存症といった精神疾患は相談しづらいものです。また、精神面に問題を抱えている場合は、本人が受診を頑なに拒んだり、適切な診断がつかないことも多いです。問題を抱える本人も、その子供たちも、理由や解決策が見出せないまま追い詰められていきます。

私が代表を務める介護者メンタルケア協会にも、働く両親に代わって祖父の介護をしている男子高校生から「お昼ご飯を持って行ったら、暴れておじいちゃんが怪我をしてしまった。どうしたらいい?」という相談が入ったことがあります。また、精神面に問題を抱えた親のもとで育ち、自分がヤングケアラーだったことに何十年もたってから気がついたという声もあります。

私たちは、学校や友人関係といった他者との関係性の中で、人生の目的や自分らしさ、自分の役割を育んでいきます。適切な環境と教育、他者との関係性を築く機会を失われたヤングケアラーたちは、進学や就職で家族を優先するあまり、将来の夢や可能性を諦める人も多いです。

ヤングケアラーが親との共依存関係に陥りやすいのは、家族関係の中でしか役割や自分らしさを体験できないからです。以後の生活にも影響が及ぶため、18歳を超えている人たちや、元ヤングケアラーの支援も必要です。

事例1 40代男性 会社経営
13歳で父が脳梗塞を発症、身体障害1級、要介護5の状態になり、全身の介護が日課となる。26歳の時、恋人と会う時間を確保するために一人暮らしを始める。月2~3回、父の介護を手伝いうために実家に戻っていたが「自分は家族を捨てた」と、10年以上悩み続けた。

事例2 30代女性 会社経営
大声で暴れたり、家出をしたりと情緒不安定な母親のもとで育つ。20歳の時、ゴミ屋敷化していた実家を出て独立し、結婚、子育て、仕事に集中。その後、母に統合失調症の診断が下り、投薬で状態が落ち着くように。ようやく、実家に顔を出して母の相手をする余裕ができた。「共依存に気づき、『先に幸せになってやろう』と決意できたことが大きかった」

ヤングケアラーに対する正しい知識が圧倒的に足りない

「それはあなた個人の問題だから、甘えないで頑張りなさい」これは、大学卒業後に入学した理学療法士養成学校の先生に言われた言葉です。

病院での臨床実習中、母が脳梗塞を起こし緊急入院しました。6週間に及ぶ実習中、母の看護、祖母と弟の生活支援と家事が一気にのしかかり、課題のレポートに手がつけられませんでした。学校に報告すると「実習中の特別対応はできない」と、件の言葉が投げかけられたのです。

なんとかレポートを提出すると、実習先の担当バイザーから「こんないい加減な学生は初めてだ!」と叱られ、落第を覚悟し、諦めかけていた時のことです。病院のリハビリ責任者を務めている先生が声をかけてくれました。「あいつらは若いから、障害を持つ家族を支える大変さがわからないんだ。許してやってくれ。逆に君は、彼らには無い経験を持っている。理学療法士になった時、その経験が患者さんや家族のために生かされる。だから、諦めないで」この先生の言葉を励みになんとか実習をクリアし、理学療法士の国家資格を得ることができました。

父の死後、母、祖母、知的障害の弟、家族3人を同時に20年以上介護できたのは、理学療法士の資格を取り、病院に勤くことができたからです。もちろん、介護と仕事の両立でも悩みましたが、大変な時には、いつも誰かの一言で救われました。

生きづらい状況の中で奮闘している人たちは「わかってもらえた」「応援してもらえている」と感じられる誰かの言葉で人生が変わることがあります。ヤングケアラーや元ヤングケアラーに「あなた自身が幸せになることを諦めてはいけない」そう伝える人が増えるための情報発信をしていきます。

橋中今日子

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